古い古い街の、古い大学の、古い図書館の一番古い一角に、それはそれは古い箱があります。その箱は、大学の一番大切な宝ものが入れてあった箱でした。
大学の一番大切な宝物って何だと思います?
そうです、それは、本でした。
その昔、大学で一番年老いて一番長いひげをはやした学者先生と、二番目めに年老いて二番目に長いひげの学者先生と、三番目に年老いて三番目に長いひげの学者先生が集まって、大切な本を入れておく箱はどんなものがいいのか、あれこれ議論をしました。なぜって議論をすることが学者先生の仕事でしたからね。
「ともかく、ふたに厳重に錠をかけなくてはいけない」
「そのとおり。そしてその錠をかける立派な鍵が、是非、必要である」
「まさにそのとおり。そしてその鍵は大切に保管されなければならない」
すぐにはなしはまとまりました。
ところが、では、その鍵は誰が持っているのかと、いうことになると、なかなか意見がまとまりません。
「一番、年上のわたしが持っていることにしよう」 と、一番年寄の学者先生。
「いえ、一番、たくさん本を読んでいるわたくしこそが持っているべきです」と、二番目の学者先生。
「いえいえ、これから一番長く生きるわたくしが持っていた方が危なくない」 と、三番目の学者先生。(たいして年の差はなかったのですがね)
仕方がないので、鍵を三つ作り、その三つの鍵を合わせると初めて開けることのできる錠を作ることになりました。それが、このふたの裏側にある錠です。
三本の鍵を三つの鍵穴から同時に回すと、カチャカチャと仕掛けが動き、錠がカチっと開いて、ふたがあくのです。
これは、本当のお話ですよ。